New Year
 
いつの間にか眠っていたようだ。
裸のままで少し肌寒く、でも起き上がるのも面倒でなんとなくまどろんでいると。
外で大きな音が響いた。
反射的にウィンが飛び起きて俺を探し胸の下に抱え込む。
子供のように震えながらも習性のように俺を守る。
笑い声と共にしばし爆音は響いた。
そうか、春節だ。
こんな時間に迷惑甚だしいが年に一度のことだからまあ大目には見てやるが。
 
「驚いたな。もう少し防音のいい所に引っ越すか」
「すみません・・・大丈夫です。いえ・・・これ位人の多い場所の方が・・・」
 
震える声。冷えた唇を優しく撫でてそして吸った。
命を分け与えるように。ゆっくりと。
だんだんと温もりが戻って来る。
 
「とんでもない刺客だったがお陰で目が覚めた。間も無く日が変わる。おまえと年越しができるな」
「はい。こんなゆっくりとした春節は初めてですね」
 
いつも何やかやと祝いの席に駆り出され、慌しいままに過ぎていた。
年の変わり目も季節の変わり目も気にする間も無く。
ずっと二人きりだ。夢のような日々なのに。
体の傷は日を追うごとに良くなるのに見えない心の傷は深くなるばかり。
明らかに精神を蝕まれていた侯爵とその執事。
空白の数時間の間にまるで感染症のようにその病を得てしまったウィン。
専門は薬理だったが心的外傷の特効薬は知らない。
密やかに試した療法もあるが効果は得なかった。
こうして震えが止まるまで抱いているしかない。
 
「清劉?」
「初日までまだ間がある」
 
無理をすることは無い。ゆっくりと不安を無くしていければ。
いつまでも抱いていよう。命ある限り。いや、命尽きても。
爪の先までおまえのものであるこの体で。
 
抱いていよう。
 
 

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(2011/02)
 

 

 

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